ハウスメーカー建築士の、施主さんには言えない話

ハウスメーカー設計職を両手くらい渡り歩いた建築士が、ハウスメーカーの内情を書き綴るブログ

契約直前の打ち合わせの前に読んでほしいこと~その1~

契約前の施主は疲れている

初めて住宅展示場に行ってから、契約の日まで、大体何カ月何時間かかるでしょうか?
施主さんはせっかくの休日に何時間も営業にヒアリングされ、何回も修正変更したプラン・平面図・断面図・外観図などを見せられ、かなりお疲れのことと思います。
注文住宅を建てようとするお客様は大抵、お子さんが生まれたとか、結婚したとか、仕事が順調だとか、老後の為にとか、人生が充実している方や先の生活を見越している方が多いです。
そんな充実した人達が休日を一日何時間も何カ月に渡って潰して、何社も並行して連絡を取り合い、赤の他人である営業を家に呼んで生活の様子を見せたり、見慣れない図面を見比べて悩んでいるわけですから、自分でも気付いていないだけで注意力・判断力が欠けています。
更に言えば、ハウスメーカーの契約棟数は多くの企業と同じく月末締めですから、クロージングは月末に行われます。施主さんも、ハウスメーカーの担当者も疲れている状況下で、人生最大最初で最後の買い物をするわけです。
簡単なことを見落としがちになります。

 

契約前の施主さんは絵図しか目に入らない病にかかっている

そろそろ契約かなという打ち合わせの日。
営業は図面や分かりやすい外観図やパースを見せて、いかに施主の要望を盛り込んだかとか言ってくるわけです。
まずは書類の全てを手にとって端から端までじっくり見てみましょう。
人を馬鹿にするなと思われそうですが、これが出来ていない施主さんが非常に多い。
図面や絵のような完成予想図にばかり目が行ってしまい、このデザインで自分の家が建つのかという不安と葛藤とお金の心配で頭がいっぱいで、文字が目に入って行かない。
そして、細かい文字で書かれた注釈を見逃します。


ハウスメーカーで契約プランを見せられたとき、最低限聞くべき最重要チェックポイント

図面の端っこにこう書いてありませんか?
※実際には法規や構造の関係でプランが変更になる場合があります。
一番説明を聞くべき部分はこの注釈、"※"部分の内訳です。
こういった"注意書き"を小さーく図面の端につけて「こう書いてありますけどまあ大丈夫ですよ^^」なんて営業が軽く言ったのを施主の同意として契約するハウスメーカーは多くあります。

 

そもそも契約したプランで家が建つのか?

実際に契約した通りのプランで家が建つことは物理的にあり得ません。絶対です。
契約後の更なるヒアリングの結果、施主さんの要望が変わってきたり、水回りや電気など設備関係の配線を優先した結果構造的にプラン変更を余儀なくされたりします。
細かい変更をしていくのが業界の普通です。こういったプラン変更はどのハウスメーカーでも同じで不可避の現象です。
ただ、「とりあえずお客さんには都合のいいことを言ってとりあえず契約して囲い込んで、契約後にプラン作り直せばいいよね!」という"初めから契約後の大幅なプラン変更を前提とする企業体質"のハウスメーカーも少なからず存在します。

気を付けてください。


法規の確認・チェックがされているか?

では、最重要チェックポイント"注釈"について、何を聞けばいいか?
それは、「土地やプランに対しての法規の確認・チェックがされているか?」です。
土地や建物には、日当たり・道路からの距離・建物高さ・建物の面積・延べ面積・防火防災・使用建材・構造など、あらゆる面から制限・規制がかけられています。
自分の土地でも自由に好きな建物が建てられるわけではなく、しかも規制はとても複雑です。特に高さや面積について見落としがあった場合、大幅なプラン変更を強いられるので、ハウスメーカーの担当者がお客さんに会って最初にする仕事は、この法規チェックです。最初の打ち合わせの時点でクリアしているべき問題です。
大手をはじめ大体のハウスメーカーではこれを徹底していますが、中には、これをおろそかにする怠けた担当者や、知識不足のまま本人も間違いに気付かずに推し進めてしまう非建築系大学卒の営業職もいます。


「ところで、法律的にこのプランは建つんですか?」


必ず、聞いてみましょう。


実際にあった最悪の事例…

私が転職したとある新興ハウスメーカーでは、契約後に"初めて"実施設計の担当者が法規チェックをはじめ、土地の測量・用途地域の確認・各種規制の確認を行政や確認検査機関に行う、という業務フローでした。
運の悪い場合、建築基準法の規制に引っかかってしまい、契約前に提示された案が根本的に実現出来ませんでした。
 高さの規制では、屋根の形が斜めになったり、天井高が低く圧迫感のある家になったり、最悪三階建てが二階建てになったり…
 面積の規制では、狭い土地に広い家が建つと言われたのに、建築面積・延べ面積が確保出来ず狭い家になったり…
 道路への規制では、道路から建物が離れてしまい、方角によっては日当たりの善し悪しが変わったり…
「モダンでイマドキっぽいお洒落な四角い家に住みたい」と思ってこの会社を選んだのに、契約後に「法規を調べたらこの土地では三角屋根しか建てられません」って言われた…もう契約しちゃったし土地も買っちゃったしどうしよう…なんて事例が頻発。勿論クレームです。
契約前の担当者は次のお客さんを担当していて、契約後に困った施主さんのフォローとカバーをし別プランを提示して納得してもらう役割を担うのは、何も事情を知らない実施設計者です。私です。
私はすぐこの会社を辞めました。


おわりに

HPやHPに載っている家がお洒落で好みだから、最悪どう転がっても大丈夫だろう―とか考えてはいけません。
増税前に!子供が小学校に入る前に子供部屋が欲しい!定年までのローンを組むにはギリギリの年齢だし!と家購入を急ぐ理由は一度仕舞って、契約前に担当者に不明点を一つ一つ確認しましょう。もし担当者が曖昧にポジティブな返答ばかり返すようなら、その会社の住宅の建て方ではデメリットが多かったり実現出来ない可能性もあります。だから曖昧な言い方でしか返せないのです。

どんなに人柄がよく相性のいい気に入った担当者だったとしても、そのハウスメーカーで建てるべきではありません。

 


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